釣り具メーカーのクーラーボックスの闇


釣り用のクーラーボックスを買うときに選択肢に上がるダイワとシマノ。
そのときに必ず浮かぶ疑問。

どちらが優れているのか。

カタログスペックから読み解いてみました。(間違ってたらごめんなさい)

目次
  • ダイワ製クーラーの保冷性能指標「KEEP」
  • シマノ製クーラーの保冷性能指標「I-CE」
  • カタログスペックからより正確な理論値を導き出す!
  • 測定条件を考慮しよう
  • 結局どっちがいいの?
  • 番外編 大きいボックスは保冷時間が長い?
  • 2kgの氷が融ける時間を計算しよう
  • ダイワ製クーラーの保冷性能指標「KEEP」

    ダイワの場合、保冷性能のカタログスペックとして「KEEP」というものがあります。

    KEEPとは

    「『KEEP』はJIS規格(JIS S 2048 : 2006)の簡便法に基づいて氷の残存率を算出。更に氷が溶けきるまでの時間に換算して「KEEP○○」という値で表現しています。」

    https://www.daiwa.com/jp/fishing/information/1245262_4340.html

    つまり、8時間で氷がこれだけ融けたから、全部融けきるのに○○時間だよね。

    ってことです。

    しかしこの計算方法、消費者を馬鹿にしています。

    KEEP値の半分くらいしか氷は持ちません。

    KEEPのカラクリ

    KEEP値の計算方法の理屈は、
    ①クーラーボックスにボックス容量25%の-20℃の氷を入れ、
    ②8時間で融けた氷の量を測定し、
    ③残量が融けきる時間を比例計算しています。

    この比例計算で算出された数字が「KEEP○○」です。

    しかし③の比例計算がまずい。

    ③が成立するのは、測定開始と同時に氷が融け始める場合です。

    常識的に、冷凍庫から取り出した氷をクーラーボックスに入れてもしばらく氷は融けません。少し経ってから融け始めます。

    それはなぜか、科学的に説明します。

    氷が水になるのは以下の2つの過程を経ます。

    (1)0℃未満(氷点下)の氷が氷のまま0℃まで温度上昇する過程。

    (2)0℃の氷が0℃のまま融けて水になる過程。(融けた水が混じる)

    つまり、KEEP値算出の測定において、最初の8時間のうち数時間は氷が融けていないのです。

    その点を考慮するとどうなるのでしょうか。

    例えば下の図で説明すると、KEEP75のクーラーボックスは最初の8時間で11%(100%-89%)の氷が溶けています。

    しかし、実際には測定開始後の前半の数時間は氷は融けておらず、後半の数時間で11%の氷が溶けたのです。

    そうすると、残りの氷が融けきる時間もずっと短くなり、75時間も氷のまま保つことなんてできないのです。

    大げさに説明すると、、、

    11%の氷が融けるのに8時間かかると思ってたけど、本当は1時間でした~

    え!?じゃあ残りの89%の氷は8時間くらいしか残らないじゃん!

    ってことです。

    これはあくまでも大げさに表現したものですが、傾向としてはこの通りです。

    みなさん、騙されてましたね?

    シマノ製クーラーの保冷性能指標「I-CE」

    シマノの場合、保冷性能のカタログスペックとして「I-CE」というものがあります。

    I-CEとは

    「クーラー内容量の20%の氷を31℃の温度下で1時間保持できることを1hと表し、たとえば『I-CE 70h』という表記なら70時間キープできる保冷力がある目安となります。」

    「31℃の保温庫に放置し、容量に対して20%の氷を入れて24時間まで計測。24時間以降の数値は想定値です。」

    http://fishing.shimano.co.jp/product/goods/3641

    つまり、24時間で氷がこれだけ融けたから、全部融けきるのに○○時間だよね。

    ってことです。

    ん?どっかで見たような・・・。そうです、ダイワの「KEEP」と同じ思想で算出した保冷時間です。

    繰り返しの説明は省略しますが、ダイワと同じようにシマノの場合もI-CE値ほど実際の保冷時間は長くありません。

    みなさん、騙されてましたね?(2回目)

    カタログスペックからより正確な理論値を導き出す!

    実際に氷が融けきる時間は、氷の比熱(2.1kJ/kg・K)と融解熱(333.6kJ/kg)を用いてKEEP値やI-CE値から逆算できます。もちろん厳密には色々な条件を考慮しなければなりませんが、カタログスペックよりよっぽど現実的な計算です。

    ダイワの場合

    KEEP値の算出では-20℃の氷を投入していることに注意します。

    (1)まず、KEEP値から測定開始後8時間で融けた氷の割合を算出します。これは単純に「8(時間)÷KEEP値」で求まります。

    (2)次に(1)で算出した割合から、氷の比熱と融解熱を用いて8時間で氷を融かすのに加わった熱量を算出します。計算の原理は、全量の氷が-20℃から0℃に昇温するのに必要な熱量を氷の比熱から求めるとともに、(1)で算出した割合の氷が0℃のまま融けるのに必要な熱量を求め、それらの熱量を足し合わせます。

    (3)次に(2)で算出した熱量から、単位時間当たりに氷に加わる熱量を一定と仮定したうえで算出します。

    (4)最後に、全量の氷が-20℃から融解するのに必要な熱量を氷の比熱と融解熱から求め、それを(3)で求めた値で割れば、実際に氷が融けきる時間が求まります。

    KEEP値:

    氷の持ち時間:

    大人気のクールラインαⅡシリーズを見てみましょう。

    6面真空パネルの「VS1500」

    6面発泡ウレタンの「GU1500」

    VS1500はKEEP80、GU1500はKEEP40です。

    しかし、実際の保冷時間はVS1500は約40時間、GU1500は約32時間です。

    値段は2.5倍です。。。

    シマノの場合

    シマノはI-CE値の測定時に投入する氷の温度を公表していませんが、聞いたところによるとコンビニ等の冷凍庫の温度を基準にしているようです。今回は-25℃と仮定しました。

    (1)まず、I-CE値から測定開始後24時間で融けた氷の割合を算出します。これは単純に「24(時間)÷I-CE値」で求まります。

    (2)次に(1)で算出した割合から、氷の比熱と融解熱を用いて24時間で氷を融かすのに加わった熱量を算出します。計算の原理は、全量の氷が-25℃から0℃に昇温するのに必要な熱量を氷の比熱から求めるとともに、(1)で算出した割合の氷が0℃のまま融けるのに必要な熱量を求め、それらの熱量を足し合わせます。

    (3)次に(2)で算出した熱量から、単位時間当たりに氷に加わる熱量を一定と仮定したうえで算出します。

    (4)最後に、全量の氷が-25℃から融解するのに必要な熱量を氷の比熱と融解熱から求め、それを(3)で求めた値で割れば、実際に氷が融けきる時間が求まります。

    I-CE値:

    氷の持ち時間:

    シマノでは、フィクセルシリーズを見てみましょう。

    6面真空パネルの「フィクセルウルトラプレミアム30L」

    6面発泡ウレタンの「フィクセルベイシス30L」

    ウルトラプレミアムはI-CE110、ベイシスはI-CE50です。

    しかし、実際の保冷時間はウルトラプレミアムは約74時間、ベイシスは約44時間です。

    値段は2.7倍です。価格差に対する性能差はダイワより上ですね。

    測定条件を考慮しよう

    ダイワとシマノを比較する場合、上のフォームで計算した時間が長いほうが良いのか?と聞かれれば、単純にそういう問題でもありません。

    測定条件を考慮しなければなりません。

    測定環境の違い

    まず、ダイワとシマノは測定環境が異なります。ダイワは40℃の部屋で測定し、シマノは31℃の部屋で測定しています。測定環境はダイワのほうが過酷なのです。

    この測定環境の温度差がどう影響するのかといいますと、大ざっぱに言えば「ダイワのほうがシマノよりも3割過酷」です。

    氷の投入量の違い

    さらに、ダイワとシマノは、測定時に投入している氷の量も違います。ダイワは容積25%の氷を投入しているのに対し、シマノは容積20%の氷を投入しています。

    これにより、ダイワのほうがシマノよりも25%も氷の持ち時間が長くなります。

    測定条件を揃えたら?

    ↓ダイワのクーラーボックスの性能をシマノ基準に揃えると、こうなります。

    KEEP値:

    氷の持ち時間(シマノ基準に補正):

    ↓シマノのクーラーボックスの性能をダイワ基準に揃えると、こうなります。

    I-CE値:

    氷の持ち時間(ダイワ基準に補正):

    結局どっちがいいの?

    ダイワとシマノの似たようなモデル同士で比較します。今回は、より実使用環境に近いシマノ基準で氷の持ち時間を計算してみました。

    船用6面真空パネルモデル対決

    (1)ダイワ プロバイザートランクHD II ZSS 3500

    (2)シマノ スペーザ プレミアム 350 キャスター

    モデル名 本体価格 カタログ
    スペック
    氷の持ち時間
    (シマノ基準)
    プロバイザートランクHD II ZSS 3500 57,400円 KEEP127 49時間
    スペーザ プレミアム 350 キャスター 58,500円 ICE値65 53時間

    船用大型底1面真空パネルモデル対決

    (1)ダイワ トランクマスターHD II SU 6000

    (2)シマノ スペーザ ホエール ベイシス 65L

    モデル名 本体価格 カタログ
    スペック
    氷の持ち時間
    (シマノ基準)
    トランクマスターHD II SU 6000 51,000円 KEEP110 47時間
    スペーザ ホエール ベイシス 65L 61,000円 ICE値80 61時間

    陸っぱり用最高峰6面真空パネルモデル対決

    (1)ダイワ プロバイザーHD ZSS 2700EX

    (2)シマノ フィクセル ウルトラ プレミアム 30L

    モデル名 本体価格 カタログ
    スペック
    氷の持ち時間
    (シマノ基準)
    プロバイザーHD ZSS 2700EX 62,400円 KEEP120 48時間
    フィクセル ウルトラ プレミアム 30L 63,500円 ICE値110 74時間

    陸っぱり用中型発泡ウレタンモデル対決

    (1)ダイワ クールラインα II GU 1500

    (2)シマノ フィクセル ベイシス 17L

    モデル名 本体価格 カタログ
    スペック
    氷の持ち時間
    (シマノ基準)
    クールラインα II GU 1500 13,500円 KEEP43 30時間
    フィクセル ベイシス 17L 20,000円 ICE値43 39時間

    結論
    シマノ圧勝

    というかダイワさん、さすがにKEEP値酷くないですか?

    番外編 大きいボックスは保冷時間が長い?

    容量は大きいほうがいい?小さいほうがいい?

    例えばシマノのフィクセルベイシスを見ますと、30LでI-CE値50、17LでI-CE値43となっています。

    これを計算しなおしますと、30Lで44時間、17Lで39時間となり、やはりI-CE値の傾向と同様で、実際の氷の持ち時間も30Lのほうが長くなっています。

    そりゃそうだろ、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それはなぜでしょうか。

    答えは、クーラーボックスに投入した氷が多いからです。

    測定時に投入する氷の量はボックス容量の20%なので、氷の量は30Lのモデルで6L、17Lのモデルで3.4Lです。

    そりゃ6L全部融けるほうが時間がかかるに決まっています。

    仮に、フィクセルベイシス30Lで氷の量を3.4Lに減らしますと、氷が融けきる時間は25時間です。逆転しました。

    そう、実は大きいクーラーボックスほど氷が融けやすいんです。理由は簡単で、ボックスが大きいほど表面積も大きいので熱が逃げやすいのです。

    結論
    できるだけ小さいクーラーボックスのほうがいい
    (魚が入るなら)。

    2kgの氷が融ける時間を計算しよう

    全部の基準を統一!31℃環境で-18℃2kgの氷が融ける時間は?

    KEEP値:
    ボックス容量(リットル):

    2kgの氷の持ち時間(外気温31℃想定):
    I-CE値:
    ボックス容量(リットル):

    2kgの氷の持ち時間(外気温31℃想定):

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